まつもと整体院の好きな事色々

万城目と由利子が深夜のドライブに出かけた。
一緒に連れて行ってもらえず、怒る一平の頭上を電車が走る。
路上に倒れている男（沢村）を発見した万城目が沢村を車に乗せて走り出す。
踏切で電車が止まり、警笛が鳴ると、沢村が急に立ち上がり、「あけてくれ、おろしてくれ」と叫ぶ。

沢村は電車の中にいた。
切符を見せてくれという車掌だが、沢村が持っている定期ではこの電車は乗れないらしい。
車掌は沢村を友野という男の所へ連れて行った。
友野の話によると、この電車は世の中の煩わしい事のない遠い所へ何もかも捨てて行きたいと言う人を、そんな別世界へ連れて行くための電車だと言う。
そんな馬鹿なと言う沢村が外を見ると、外の世界は現実と違う様子になっていた。
沢村の妻と娘がお父さん行かないでと叫んでいた。
沢村は叫んだ「あけてくれ！」

一の谷博士、万城目、由利子の三人は警察に呼ばれ、以前、電車失踪事件か起きていた事を知らされる。
万城目と由利子はその帰り、運転する車の中で不気味な男の声を耳にする。
すると友野の小説が車の中から発見された。
その頃、会社に戻った沢村は、今頃来て何だ、もう帰れ、と上司に怒られ、お世話になりましたと帰って行った。
友野の小説を読む万城目と由利子。

そこに一人の男がいた。
いつからだろうか、彼はこの現実の世界から脱出したいと考えていた。
その日もＳＦ小説愛好クラブなどという愚劣な集会に出て、死ぬほど疲れていた。
それに作家としての彼はスランプ状態にあったのは事実である。
彼自身、自分の書いている非現実の世界への逃避をいつも夢見ていた。
そしてその時、彼はそのエレベーターが途方もなく下降して行ったらどうなるだろうと考えた。
彼自身の小説では、そんなストーリーは何点かあった。
果てしなく下降していくエレベーターが到着したのは、全くの別世界であるというような。
こうして彼は念願の世界に入ったが、そこにはすでに先住者がいて、子供まで生まれていた。
といって、それらの生活は決して模倣でもデフォルメでもなく、全く想像もつかぬ素晴らしいものであった。

こんな世界の住人になった友野は時々現実の世界に連絡を取っていたのだ。
夜、ぶらぶらと街を歩く沢村が空を見上げて叫ぶ。
「連れてってくれ！俺も連れてってくれ！」
電車が空を走って行く。